鹿屋へと向かう。
今回は仕事ではない。
墓参りである。

我々、うちの会社の同期組にとっては
のど元に刺さった棘となっている
ある出来事以来、
毎年恒例となっている墓参りである。

実は、同期の一人が亡くなっているのだ。

それはもう11年ほど前のことになろうか、
年末も押し迫ったある日、
我々は「彼」の訃報を聞いた。
詳細は記せないが、「彼」は世を去った。

「彼」の実家が鹿屋にあり、
それ以来毎年同期の間で誘いあわせて、
行ける者だけで墓参りにいっている。

今年は、年末に折り合いがつかず、
今日の墓参りになった。
結局都合がついたのは私ともう一人だけで、
二人だけでの墓参りである。

今日は冷たい風の吹く日で、
「彼」の葬儀の日を思い出させる一日であった。

墓は「彼」の実家のすぐ近くにあり、
我々はまず「彼」の実家を訪れた。
「彼」のご両親は元気そうで、
我々の訪問をとても喜んでくれた。
訪れるときはいつもそうなのだが、
まるで我が子が久しぶりに実家に帰ってきたときのように
喜び、そして歓待してくれるのだ。
今日も少し話してお暇するつもりが、
いつの間にか寿司まで取ってくださり、
すっかりご馳走になってしまった。
毎度毎度伺ったときにはこんな調子で、
我々としてもかえって恐縮してしまい、
それ故ここ何年かは墓に参るだけで
「彼」の実家へは顔を出さずにいた。

昨年の暮れ、「彼」のご両親から封筒が届いた。
中にはビール券が・・・・
何も記されてはいなかったが、
とりあえず電話をかけてみると、
「ずっと前に送ろうと思っていたものだが、そのまま忘れてしまっていて
先日出てきたので何も書かずにただ送りました」
とのことであった。
これは一つのメッセージと我々は捉え、
本日の実家訪問となった。

他愛もない話であるが、
ご両親はいっしょうけんめいに語り、
そしてもてなしてくれた。
父君は県の職員であったが、すでに退職され、
その後は嘱託で仕事を続けられているとのこと。
母君は近所のオバサマ方と旅行へ行ったり、
毎日を楽しまれている様子。

我々も近況を話し、
そして時間が過ぎていった。

辞する前に、墓へ立ち寄る。
月日の流れも感じるが、昨日のことのようにも思える。

別れ際、父君がまた封筒を手渡してくれる。
固辞するが、どうしてもと受け取らされてしまった。

またしてもビール券。

近日中に久々に同期会を開き、
「彼」を偲び飲んだくれねばなるまい。

熱燗